※本ページにはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。

一級建築士がNY時間のデイトレードに持ち込んだ設計思想

【アイキャッチ】一級建築士がNY時間のデイトレードに持ち込んだ設計思想

このページは、FXの用語解説ではありません。

私は一級建築士です。建築確認審査という、設計者が出してきた図面が法律に適合しているかどうかを確認する仕事もしていました。その人間が、いまはニューヨーク時間のデイトレードだけをやっています。

FXを説明した文章は、日本語のウェブに何万ページもあります。そこに何万一ページ目を足すつもりはありません。ですからこのページに書くのは、私が自分で選んで、自分で捨てた理由だけです。

なぜニューヨーク時間なのか。なぜデイトレードなのか。なぜテクニカルなのか。そして、建築の現場で身につけた考え方の何が、いまのトレードに効いているのか。

読んで「自分には合わない」と思われたら、それでいいのです。合わないと分かることにも意味があります。ここに書いてあるのは私一人のやり方であって、万人に当てはまる正解ではありません。

  1. 建築の仕事からFXに移った人間から見たFX
    1. 審査という仕事が教えるのは「本当にそうだろうか」という目
    2. 医者は、患者の話で診断を左右しない
  2. なぜ私はニューヨーク時間だけを選んだのか
    1. 選択肢がそこしかない人が、大勢いる
    2. 実際にトレードしている時間
    3. 他の時間帯を試して、うまくいかなかった
    4. そして、最も難しいと言われる時間帯で示したかった
  3. 私がデイトレードを選び、他を捨てた理由
    1. ポジションを持ったままでいるのが、私には耐えられない
    2. 指標トレードは、やらない
  4. なぜテクニカルを重視するのか
    1. 「大局観」という言葉を、私は将棋から借りている
    2. 短い時間軸で動いているのは、人間の心理だから
  5. なぜデイトレードが自己改革に向くのか
    1. 決定するのは意志であって、感情ではない
    2. スイングトレードでは、同じ場面が起きにくい
    3. 「ミスがミスを呼ぶ」ということ
  6. 私のトレード環境
    1. モニターは2枚。3枚は多かった
    2. 机の上に、余分なものを置かない
    3. 二酸化炭素の濃度を測っている
    4. PCは高性能で小型、回線は有線
    5. 椅子は、トレードの利益で買った
    6. マウスは、1本の記事にしてある
    7. トレード中は、他のことをしない
  7. 建築の設計思想でトレードを読み解く
    1. 制約があるから設計できる
    2. 法は「気をつけて歩け」とは言わない
    3. 自分で「適合しています」と言っても、着工はできない
    4. 「人は間違えるものだ」が、設計の大前提
    5. 戸が閉まるまで、エレベーターは動かない
    6. 平常時に一度も使わない設備に、法は金をかけさせる
    7. 建てた当時は合法でも、法改正で不適合になる
    8. ミスが許されない現場を、私は3つ通ってきた
  8. 用語集 ── 私はこの言葉をこう使っている
    1. ここで触れた考え方を、個別に書いた記事
    2. このページで触れた本

建築の仕事からFXに移った人間から見たFX

東京理科大学の工学部建築学科を出て、ハウスメーカーに入り、建築設計に従事して一級建築士を取りました。そのあと行政庁に移り、建築確認審査に従事しました。建築基準適合判定資格者でもあります。

FXを本格的に始めたのは2019年です。きっかけは『ガチ速FX』という一冊の本でした。2026年に法人を設立し、専業になりました。

経歴としてはそれだけです。ただ、この経歴のどこがトレードに効いているのかは、自分でもはっきり分かっています。設計者の言い分を、そのまま信じてはいけないということです。

審査という仕事が教えるのは「本当にそうだろうか」という目

建築確認審査は、こういう仕事です。

設計者が「このプランはこういう考え方なので、法律に適合していると思います」と主張して図面を出してきます。審査する側は、それを「本当にそうだろうか」という目で見ます。法律に照らしていくと、これはアウトなのではないか。少し調べてみよう。調べてみると、やはりグレーだ、微妙だ。そうしたら説明を求めて、着地点を一緒に探していく。

自分の考えを、根拠を持って持つ。この思考法は、審査の仕事の中で培われました。そしてこれは、そのまま投資家の考え方でもあります。

投資は全部が自己責任です。自分の考えで行動しなければなりません。誰かがこう言っていたからこうなのだろう、とそれに乗っかってしまうと、他責思考になります。長い目で見て、それはうまくいきません。

医者は、患者の話で診断を左右しない

私はこれを、医者の考え方に近いものだと思っています。

医者は患者の話をあまり聞きません。正確に言えば、聞いてはいるけれど、参考程度にしか扱いません。なぜかというと、患者の話で診断を左右したくないからです。あくまで自分で診察した結果と、レントゲンなどのデータと、目の前の状況を見て、自分で判断して結論を出したい。だから患者の自己申告を、診断そのものの根拠にはしないのです。

トレーダーも同じだと考えています。

周りにはいろいろな意見があります。ニュースがあり、SNSがあり、無数の見立てがあります。参考にはします。でも、鵜呑みにして従うことはしません。あくまで自分でテクニカルを使い、チャートを診断し、自分で判断を下して行動する。

私がどういう人間なのかは、プロフィールをご参照ください。

なぜ私はニューヨーク時間だけを選んだのか

宇宙から見た夜の地球。日本列島と北米東海岸が青い光の弧でつながり、その帯にローソク足チャートが流れているイメージ
正直に書きます。選んだのではありません。そこしかなかったのです。

私はもともと兼業トレーダーでした。会社の仕事が終わったあとにしか、トレードに使える時間はありません。小さい子供がいて、家庭もありました。自分で自由に使える時間は深夜だけ。それも、子供の寝かしつけが終わったあとの時間だけです。

そこにあった時間帯が、ニューヨーク時間でした。

選択肢がそこしかない人が、大勢いる

これは私だけの話ではありません。

日本の兼業トレーダーの多くが、同じ制約の中にいます。仕事を終えて、家のことを済ませて、ようやく自分の時間になったとき、開いているのはニューヨーク市場です。時間帯を選べる人のほうが少ない。

だとしたら、その時間帯で勝ち続けて自由を獲得できるということを、誰かが示す必要があります。私はそう考えました。

実際にトレードしている時間

具体的には、22時30分ごろから24時30分ごろまでが多いです。

遅いときは2時、3時になることもあります。ただ、そこまで延びた日は、たいていうまくいっていない日です。これは私の実測です。時間が延びているということは、想定通りに進んでいないということで、勝つことに執着してしまっている場合が多いです。

深夜の時間帯に何を注意すべきかは、この記事に書きました。

他の時間帯を試して、うまくいかなかった

祝日や有給を取った日に、東京時間や欧州時間でやってみたこともあります。

うまくいきませんでした。

理由ははっきりしています。普段入っている時間帯ではないからです。同じ通貨ペアでも、時間帯が変われば参加者が変わり、値動きの癖が変わります。私にはその癖の蓄積がありませんでした。

うまくいかないので、ニューヨーク時間に絞ることにしました。絞ったのは、消去法の結果です。

そして、最も難しいと言われる時間帯で示したかった

もうひとつ理由があります。

ニューヨーク時間は、最も難易度が高いと言われている時間帯です。理由はいくつもあります。

まず、欧州市場と重なるからです。ロンドン市場がまだ開いている時間帯に、ニューヨーク市場が開きます。この二つが重なっている数時間が、一日のうちで最も参加者が多く、最も値が動きます。私が見ている時間は、まさにこの重なりの中にあります。

そこへ、指標の発表が集中します。値動きが大きくなり、しかも日本人にとっては深夜にあたります。疲労と判断力の低下がピークに達している時間に、最も荒れる相場と向き合うことになります。

そこで勝ち続けることができる。それを示したかった。

いまは専業になったので、正直、どの時間帯でやってもかまいません。それでもニューヨーク時間を続けています。ずっとこの時間帯でやってきたから、という理由がまず一つ。もう一つは、いま書いたとおりです。この時間帯でも勝てるということを、証明し続けたい。

自己改革をして、環境をうまく作ってやれば、できる。私はそう考えています。

私がデイトレードを選び、他を捨てた理由

デイトレードを選んだ理由は、手法の優劣ではありません。自分の性質に合っていたからです。

ポジションを持ったままでいるのが、私には耐えられない

10年ほど前、まだ本格的にFXをやる前に、スキャルピングをゲーム感覚でやっていた時期がありました。そのときにはっきり分かったことがあります。

ポジションを持ち越すのが、私には耐えられない。

気になって仕方がないのです。他のことが手につかなくなる。ポジションが手元にある限り、意識の一部がずっとそこに持っていかれます。兼業だった当時、これは実害でした。仕事に集中できないからです。

だから、短期で終わらせる。入って、出て、その日のうちに手仕舞う。持ち越さない。この形が私に合っていました。

指標トレードは、やらない

捨てたものが、もう一つあります。指標トレードです。

雇用統計や消費者物価指数の発表の瞬間を狙って入る。あれを私はやりません。あれはテクニカルでも何でもなく、ギャンブルだと考えているからです。

発表の瞬間に何が出るかは、誰にも分かりません。分からないものに対して、値が飛ぶ瞬間にポジションを置く。当たれば大きい。外れれば、スリッページで、想定していた損切りすら効かないことがあります。

これは分析ではなく、賭けです。賭けをしたい人はすればいいと思います。ただ、私がやりたいのは賭けではありません。

なぜテクニカルを重視するのか

デイトレードだからです。これがまず一つ。

当日の数時間の値動きの中で、ファンダメンタルズはほとんど効きません。ですから当日の判断は、ほぼ全部テクニカルでやっています。

ただし、ファンダメンタルズを見ないわけではありません。見ます。大局観として感じ取るために見ます。

いまの日本は引き締めの方向なのか、緩和の方向なのか。アメリカはどちらを向いているのか。大統領が何を言ったのか。財務長官が何を言ったのか。金利の動向として重要なところは、なるべく頭に入れておくようにしています。

ただし、それでポジションを決めることは、ほとんどありません。

つまり、私のやり方は二層になっています。

何を使うか 何に使うか
大局観 金利の方向、要人の発言 相場全体がどちらを向いているのかの把握
当日の判断 テクニカル エントリーとエグジットのタイミング

「大局観」という言葉を、私は将棋から借りている

羽生善治さんの本に、こうあります。

全体を判断する目とは、大局観である。一つの場面で、今はどういう状況で、これから先どうしたらいいのか、そういう状況判断ができる力だ。本質を見抜く力といってもいい。

羽生善治『羽生流・決断の極意 決断力+大局観【2冊合本版】』

そして羽生さんは、対局を航海にたとえています。未知の海で、どんな波が来るか分からない。嵐が襲うかもしれない。しばらく東に行ってみる。すると違う波が押し寄せてくる。今度は南へ舵を切ってみる。それでも船任せにしているわけではなく、頭の中に理想とする航海があって、それを目指して舵をとっている──そういう趣旨のことが書かれています。この「理想とする航海」にあたるものを、羽生さんは大局観と呼んでいます。

私がファンダメンタルズに求めているのは、まさにこれです。

目の前の波に対応するのはテクニカルの仕事です。ですが、そもそもどちらへ向かっているのかを見誤ると、どれだけ上手く舵を切っても着きません。デイトレードであっても、大局観を見誤ると勝率に影響します。

短い時間軸で動いているのは、人間の心理だから

では、なぜ短い時間軸ではテクニカルが効くのか。

短い時間軸で動いているのは、人間の心理だからです。恐怖や欲、怒りなどです。

数分から数時間のスパンで起きている値動きは、その時間帯に参加している人たちの感情が、そのまま形になったものです。だからこそ、その形を読んでタイミングを計ることに意味がある。短いスパンの値動きの中で、うまくタイミングを見計らって入って、出る。それが私のスタイルです。

なぜデイトレードが自己改革に向くのか

短期の取引では、人間の欲望、恐怖、怒りが、そのまま値動きにつながってきます。前の章に書いたとおりです。

逆に言えば、そういう感情に囚われている人間は、見事に負けます。

だから自分を律することが必要になります。感情の奴隷になってはいけない。

決定するのは意志であって、感情ではない

そしてこれは、トレードの外側でも生きてきます。

私は、仏教や禅の思想に近いものだと思っています。感情を、なるべく自分の上位に置かない。決定するのは自分の意志であって、感情ではない。そういう生き方ができれば、人生の次元は上がっていきます。

人生の中で、感情に流されずに冷静に状況を判断して、決断して、行動したほうがいい場面は、これから先、何度も出てきます。仕事でも、家族のことでも、お金のことでも。

それが自己改革です。デイトレードで勝ち続けるためにやっていくことが、そのまま人生を上向きにすることにつながっていく。

このサイトが「FXで人生を再起動せよ」を掲げているのは、この順序で考えているからです。

スイングトレードでは、同じ場面が起きにくい

では、なぜスイングや長期ではだめなのか。

私も少しだけスイングをやったことがあります。少なくとも私の場合は、感情を試される場面が、あまり起きませんでした。

時間軸が長いからです。突発的な感情の動きが、そもそもあまり起こらない。長期的に計画を立てて進めていく話なので、突発的に感情に左右されて連射してしまったとか、ここでぐっとこらえなければいけない、という瞬間が、デイトレードに比べて圧倒的に少ないのです。

これは「スイングが劣っている」という話ではありません。自己改革の訓練の場としては、デイトレードのほうが打席の数が多いというだけの話です。

「ミスがミスを呼ぶ」ということ

そして、その訓練が最も試されるのが、ミスをした直後です。

羽生善治さんが、まさにこのことを書いています。

ミスをするとどうしても、「しまった、早く挽回しなくては……」「元の状況に戻したい!」「どうしてこうなってしまったのか?」「なぜ自分がこれをしなければいけないのか?」などという、気持ちの面での葛藤や揺らぎ、落ち着きのなさが出てきて、冷静な判断ができなくなります。ですから、本来自分の持っているものを発揮できずに、さらにミスを重ねてしまうのです。

羽生善治『結果を出し続けるために ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則』

これは、損切りの直後に起きていることの正確な記述だと思います。

そして羽生さんは、ミスがミスを呼ぶ原因をもう一つ挙げています。ミスをしたあとの状況そのものが、前より複雑になっているということです。

いったんミスをしてしまうと、今まで築き上げてきた良い〝流れ〟が、完全に断ち切られます。(中略)気持ちの面で非常に深く動揺して慌てていると同時に、事態、状況そのものがより複雑で、より難易度の高いものになってしまっているのです。

羽生善治『結果を出し続けるために ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則』

損切りをしたあとのトレードは、損切りをする前のトレードより難しい。動揺しているうえに、問題そのものの難易度が上がっています。二重に不利な状態で、私たちは「取り返す」ための判断をしようとしている。

損切りができないこと、損切りのあとに何が起きるのかについては、それぞれ記事を書いています。

私のトレード環境

環境は、自己改革の一部です。意志の強さでどうにかしようとする前に、まず場を作る。実際に私が使っているものを書きます。

モニターは2枚。3枚は多かった

メインが32インチの4K、サブが27インチのフルHDです。本当は両方揃えたいところですが、いまはこうなっています。

3枚でやっていた時期もありました。やめました。ごちゃごちゃしすぎるのと、配線が増えるからです。私はもっとシンプルなほうが好きで、2枚で十分だという結論になりました。

モニターは多いほうがいい、という話をよく見かけます。私の場合はそうではありませんでした。

机の上に、余分なものを置かない

集中するためです。色はダークカラーでなるべく統一し、机の上はきれいにして、余分なものを置いていません。

視界に入るものが減れば、判断に使える力がその分だけ残ります。

二酸化炭素の濃度を測っている

机にCO2センサーを1つ置いています。

これは建築の知識から来ています。

建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)にもとづく建築物環境衛生管理基準では、室内の二酸化炭素の含有率は1,000ppm以下(0.1%以下)と定められています。一定規模以上の建築物では、この数値に適合するように空気環境を管理することが求められます。

つまり、室内の二酸化炭素濃度は「感じるもの」ではなく「測って管理するもの」だという前提が、法律の側にすでにあるということです。

二酸化炭素は無色で無臭です。濃くなっても、人は気づけません。だから測る。一級建築士のテキストには、室内汚染のバロメーターとされる、と書かれています。

濃度がさらに上がったときに何が起きるのかも、同じテキストに載っています。空気中の二酸化炭素濃度が4%を超えると、呼吸困難、頭痛、めまいなどの悪影響を及ぼすとされています。

もっとも、締め切った部屋がいきなり4%になることはありません。私が見ているのは、そこまで極端な話ではなく、「管理すべき」とされている1,000ppmという線を、自分の部屋が超えていないかというだけのことです。

二酸化炭素の濃度が上がると判断の質が鈍る、と言われています。これが本当にそうなのか、私自身が実験して確かめたわけではありません。ただ、数値が見えていれば「そろそろ換気しよう」という判断ができます。

見えていなければ、その判断は永遠に発生しません。

深夜、締め切った部屋で何時間も過ごすというのは、換気の観点では相当に不利な条件です。建築の分野では、室内の空気環境は設計の対象であり、管理の対象です。トレードをする部屋も、同じように設計と管理の対象だと私は考えています。

実際に机に置いているのは、これです。

数値が見えているというだけの道具です。換気をするかどうかを決めるのは、こちらの側です。

PCは高性能で小型、回線は有線

PCはそこそこ高性能なものを使っています。トレードをするだけなら、そんな高性能なものは要りません。録画をしているからです。

自分のトレードを記録として残すために、画面を録画しながらトレードしています。処理落ちしたりフリーズしたりするのが嫌なので、余裕を持たせてあります。サイズは、大きすぎないミニPCを今は使用しています。場所をとりませんし、簡単に買い替えて処分できます。

回線はもちろん有線です。安定しているからです。

椅子は、トレードの利益で買った

ハーマンミラーのセイルチェアを使っています。トレードに集中するためです。

これはトレードの利益で買いました。稼いだお金を、次のトレードの質に戻す。環境への投資は、そういう順番で増やしています。

マウスは、1本の記事にしてある

マウスについては別に1本の記事を書いているので、そちらに譲ります。カスタマイズして、セッティングを詰めてあります。

トレード中は、他のことをしない

トレードの時間中は、座ってチャートを見ています。それだけです。他のことはしません。

短期集中で終わらせるスタイルなので、だらだらと何かをしながら時間を潰すということがありません。決めた時間に始めて、決めたら終わる。環境を整えるというのは、道具を買うことではなく、この形を守れるようにすることだと思っています。

建築の設計思想でトレードを読み解く

机に広げた建築の青焼き図面の線が光になって立ち上がり、ローソク足チャートに変わっていくイメージ
ここからが、私にしか書けない部分だと思っています。

建築という分野は、人間が間違えることを前提にして、それでも安全なように設計するという思想の上に立っています。そしてその思想は、法律や条例という形で、すでに社会に実装されています。

トレードの世界で同じことを言うと、「甘え」と呼ばれることがあります。意志が弱い、覚悟が足りない、と。

私はその評価に同意しません。建築の現場で、人間の意志を前提にした安全対策というものを、私は見たことがないからです。

以下に書くのは、建築の事実です。トレードにどう当てはめるかは、読まれた方が決めてください。

制約があるから設計できる

設計を、自由な仕事だと思われている方がいるかもしれません。逆です。

もし「敷地は自由、プランも自由、住む家族の設定も自由、予算も自由」と言われたら、設計はむしろできません。手がかりが何もないからです。

実際の設計はこうです。この敷地で、この環境で、この家族構成で、この予算で、この用途地域で。条件が決まっているから、その中で何ができるかを考えられる。ここはこうしたい、しかしこういう法令や条例がある、ではどうするか。それを詰めていくのが設計という仕事です。

トレードにも、似たところがあると思っています。

限られた時間帯があり、その日の環境認識があり、使える資金が決まっている。その制約の中で、自分は何をするのかを組み立てて、実行する。

「ルールで縛ると勝てるチャンスを逃す」という言い方を、ときどき見かけます。設計をやってきた人間の感覚では、それは逆です。制約を取り払えば自由になるのではありません。制約がないと、そもそも何も組み立てられないのです。

法は「気をつけて歩け」とは言わない

建築基準法には、屋上広場や、2階以上の階にあるバルコニーなどの周囲に、高さ1.1m以上の手すり壁・さく・金網を設けることを義務づける条文があります。(特殊建築物等の一定条件の建築物に限る。)

この条文に、「気をつけて歩くこと」とは書かれていません。「注意力を高めよ」とも書かれていません。設備を設けろ、と書いてあります。

なぜかというと、注意力は設計できないからです。

人間の注意力は、体調で変わります。時間帯で変わります。その日に何があったかで変わります。変わるものの上に、人命を乗せることはできない。だから、変わらないもの──物理的な設備の側に、安全を担保させます。

トレードで同じことを言うと、なぜか甘えと呼ばれます。

自分で「適合しています」と言っても、着工はできない

日本では、基本的には着工の前に建築確認を受けなければなりません。

設計者が「この設計は法に適合しています」と判断しただけでは、工事を始められない。第三者が図面を審査して、適合していると確認して、はじめて着工できます。

私は、その確認をする側にいました。

考えてみていただきたいのですが、これは設計者を信用していないからある制度ではありません。設計者の多くは国家資格を持った専門家です。それでも、専門家の自己申告だけでは足りないという制度になっている。

ここで一つ、事実を書きます。

あなたのトレードルールは、誰の確認も受けていません。あなたが自分で作って、あなたが自分で「適合している」と判定しています。そして判定する人は、判定される本人です。

「人は間違えるものだ」が、設計の大前提

設計の世界には、フェイルセーフとフールプルーフという考え方があります。

考え方 中身
フェイルセーフ 故障したときに、安全な側に壊れるように設計する
フールプルーフ 間違った使い方をされても、事故にならないように設計する

どちらも出発点は同じです。人は間違えるものだ、という前提です。

正しく使われることを前提にして設計してはいけない。これは建築にかぎった話ではなく、機械でも、プラントでも、医療機器でも同じです。

トレードの世界だけが、「正しく使う自分」を前提に設計されているように、私には見えます。

戸が閉まるまで、エレベーターは動かない

エレベーター昇降路の断面図。左は戸が開いていてかごが動かない状態、右は戸が閉じてかごが上昇できる状態を並べた図
エレベーターに乗るとき、扉が閉まりきる前に箱が動き出した、という経験はまずないと思います。

あれは、メーカーが親切にそう作っているからではありません。そう作れと、法令に書いてあるからです。

建築基準法施行令第129条の8第2項では、エレベーターの制御器が満たすべき基準を定めています。同項第二号がこれです。

かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じた後、かごを昇降させるものであること。

建築基準法施行令 第129条の8第2項第二号

「戸が開いているうちは動かさないよう注意すること」ではありません。戸が閉じた後でなければ昇降させられない構造にしろ、と書いてあります。操作する人の注意力は、この条文のどこにも出てきません。

そして、この話には続きがあります。

同令第129条の10第3項は、さらにその先を要求しています。駆動装置や制御器が故障して、戸が閉じる前にかごが昇降してしまった場合に、自動的にかごを制止する装置を設けろ、という規定です。国土交通省はこれを戸開走行保護装置と呼んでいます。

並べて読んでみてください。

「戸が閉まるまで動かすな」と決めたうえで、「それでも動いてしまったときに止めるもの」を、別に義務づけている。

一段目のルールが破られることを、法ははじめから想定しているわけです。

この二段目が義務づけられたのは、2009年9月28日以降に設置されるエレベーターからです。国土交通省の資料には、その理由が書かれています。2006年6月に、東京都港区の共同住宅で高校生がお亡くなりになる痛ましい事故が起きたからです。

ルールはありました。守られなかったのでもありません。機械が故障して、一段目が機能しなかった。それで人が亡くなり、法が変わって、二段目が要求されるようになりました。

注意を促すのか、できなくするのか。そして、その「できなくする」が破れたとき、何が受け止めるのか。

建築の側が出した答えは、この2段階の条文でした。

平常時に一度も使わない設備に、法は金をかけさせる

また、非常用照明や排煙設備なども、建物が平常に使われている限り、一度も作動しません。

それでも法は、一定条件の建築物に設置を義務づけます。点検も義務づけます。費用は建築主が負担します。

では、「今年も一度も作動しませんでした」という設備は、無駄だったのでしょうか。

建築の世界では、そうは考えません。作動しなかったというのは、設備が不要だったという意味ではなく、その一年、非常事態が起きなかったという意味だからです。

建てた当時は合法でも、法改正で不適合になる

既存不適格という言葉があります。

建てた当時の法律には適合していたけれど、その後の法改正によって、現在の基準には適合しなくなった状態のことです。違法建築ではありません。適法だったものが、基準の側が動いたことで、不適合になる。

このページを書くために、手元の一級建築士のテキストを開き直しました。室内空気環境基準の表です。

そこに載っている一酸化炭素の許容値は10ppm以下、温度は17℃以上28℃以下。どちらも、いまの基準ではありません。令和4年4月1日の改正で、一酸化炭素は6ppm以下に、温度は18℃以上28℃以下に変わっています。

私が勉強した数字が、そのまま古くなっていたわけです。

だから、法令を扱う人間は、自分の記憶を疑って引き直します。覚えていることと、いま有効であることは、別だからです。

あなたのマイルールは、いつ作ったものですか。

作った当時の相場には合っていたのだと思います。それは疑いません。ただ、基準の側は動きます。

ミスが許されない現場を、私は3つ通ってきた

ここまで書いてきたことの背景に、一つの共通項があります。ミスをしてはいけない、という前提の中で働いてきたということです。

私が通ってきた現場は3つあります。

設計では、仕様書の一行を間違えるだけで、とんでもない金額のミスが発生します。実際に、厳しく咎められたこともありました。だから、とにかく慎重にやる。

建築確認審査では、ここで自分が見過ごせば違法な建築物が建ってしまう、という立場にいます。法を預かる側なので、見落としが許されません。

公務員という仕事そのものにも、その性質がありました。間違ったことを言ってはいけない。だから徹底的に調べて、それでようやく回答する。

この3つを通ってきた人間から見ると、トレードは、ミスをしてはいけない競技です。

一つのミスが大きな損失を生み、取り返しがつかなくなる。だから、いかにミスをしないかが重要になります。

そして、ここまで読んでこられた方はお気づきかもしれませんが、建築の世界がミスを減らすためにやってきたことは、「気をつける」ではありませんでした。

用語集 ── 私はこの言葉をこう使っている

ここまで、いくつかの言葉を特別な意味で使ってきました。最後にそれを並べておきます。

辞書を作るためではありません。同じ言葉が、人によって違う意味で使われるからです。「デイトレード」も「自己改革」も、私が使っている意味と、読まれた方が思い浮かべた意味とは、たぶん少しずれています。そのずれを残したままだと、ここまで書いてきたことが別の話として伝わってしまいます。

以下は一般的な定義ではなく、このページの中で私がどの意味で使っているかです。

言葉 私はこう使っている
デイトレード その日のうちに手じまいし、ポジションを翌日へ持ち越さない取引。私にとっては時間軸の分類ではなく、「持ち越さない」という制約そのものを指す言葉です
ニューヨーク時間 ニューヨーク市場が動いている時間帯。日本時間では、夏時間の期間でおおむね21時ごろから翌朝6時ごろ、冬時間の期間で22時ごろから翌朝7時ごろにあたります。私が実際に見ているのは、そのうちの22時30分ごろから24時30分ごろです
大局観 将棋から借りた言葉。当日のエントリーを決める材料ではなく、相場がどちらを向いているかを見誤らないための地図として使っています
環境認識 その日の相場がどういう状態にあるかの把握。設計でいえば現場調査都市計画条件の確認にあたります
テクニカル 当日の判断に使う道具。私はこれを短い時間軸で動いている人間の心理を読むための道具として使っています
ファンダメンタルズ 向きを知るための材料。ポジションを決める材料としては使っていません
指標トレード 経済指標の発表に合わせて行う取引。私はやりません。テクニカルではないと考えているからです
自己改革 感情を自分の上位に置かない状態を、少しずつ作っていくこと。トレードのための技術ではなく、トレードを通して身につく生き方だと考えています
リベンジトレード 損失のあとに、取り返そうとして行う取引。判断ではなく感情が起点になっている取引を、私はこう呼んでいます
マイルール 自分で決めた取引上の決まり。私はこれを、法令でも条例でもない「要綱」のようなものだと考えています。要綱は、行政機関が事務の基準や方針を示すために内部で定める指針で、法的な根拠も拘束力もありません。簡単に破れますし、破っても外部の人には分かりませんし、咎められません
設計 制約の中で何ができるかを決めること。自由にすることではありません
フェイルセーフ 故障したときに、安全な側へ壊れるように作っておくこと
フールプルーフ 間違った使い方をされても、事故にならないように作っておくこと。フェイルセーフと合わせて、出発点は「人は間違えるものだ」という前提です
既存不適格 建てた当時は適法だったものが、その後の法改正によって現在の基準に適合しなくなった状態。違法建築とは違います
夷険一節(いけんいっせつ) 私の座右の銘。順境でも逆境でも、信念や態度を変えずに貫き通すこと
Revolis(レボリス) 私が掲げているブランド名・チーム名。手法の習得だけでなく、メンタル・環境・習慣を含めた自己改革によって、トレーダーの再起を支えるという考え方です

この一覧に、「勝ち方」にあたる言葉が1つも入っていないことに気づかれたかもしれません。

意図的です。私が持ち込んできたのは手法ではなく、建築の側で身につけた、ものの決め方のほうだからです。

ここで触れた考え方を、個別に書いた記事

このページで触れた本

本文で触れたのは、この3冊です。私がFXを始めるきっかけになった1冊と、引用した羽生善治さんの2冊です。

私は、感情的になった自分を意志で止められるようにすることはほぼ不可能であると考えており、可能な場合でも、その道は非常に険しく相当の日時を要すると判断しています。だから「設定で止める」仕組みのほうを作りました。MT4向けのツールです。

どういう仕組みなのかを読む(開発者の直販ページを準備しています)

MT4 Lock System 公式直販サイト準備中

タイトルとURLをコピーしました