デイトレは自己改革が9割|損切りできないのは意志の弱さではない

夕焼けの丘で正面を向いて座禅を組むトレーダーのシルエットと、記事タイトル「自己改革が9割」 メンタル

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今回は、このブログがなぜ手法ではなく考え方の話ばかりしているのか、その理由を書きます。

結論から言うと、デイトレードで勝ち続けるために努力すべきことの9割は自己改革だと考えているからです。残りの1割が手法や資金管理です。

単発で勝つことは、そんなに難しくない

デイトレードで1回勝つこと自体は、それほど難しくありません。

初心者でもビギナーズラックで勝てます。多少勉強すれば、それなりに勝てるようにもなります。方向性を見誤っても、タイミングさえ合っていれば勝ててしまう。運が影響する部分も相当にあります。

本当に難しいのは、勝ち続けることです。

これは1回も負けないという意味ではありません。多少の負けは許容しつつ、損失をコントロールし、トータルで利益が出ている状態を維持し続ける、ということです。

早い話が損小利大。損失はなるべく小さく、利益はなるべく大きく。

デイトレードに当てはめれば、損切りを早くして、利確は引っ張る。それだけの話です。

それだけの話なのですが、これができません。

これ以上逆行したら想定と違う。だからストップロスを置く。いざ切られそうになるとストップロスをずらす。ナンピンを重ねる。全損。

デイトレードではよくある話です。

損切りができないのは、意志が弱いからではありません

長いあいだ、私はこれを自分の意志の弱さだと思っていました。

そうではありませんでした。人間の反応が、もともとそういう作りになっているという話です。

利益と損失は、同じ重さではない

同じ大きさの利益と損失を天秤に乗せると、損失の側にだけ大きく傾く様子

行動経済学にプロスペクト理論と呼ばれるものがあります。ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱したもので、カーネマン自身の著書『ファスト&スロー』(早川書房)で詳しく説明されています。

この理論の柱は3つあると述べられています。

  • 参照点──人は金額そのものではなく、ある基準点からの変化で損得を評価する
  • 感応度の逓減──金額が大きくなるほど、追加分の重みは小さく感じられる
  • 損失回避──同じ額でも、損失は利得より強く感じられる

3つめが一番わかりやすいでしょう。同書では、五分五分の賭けで100ドル失う可能性があるとき、多くの人は200ドル程度の利得が見込めないと賭けに乗らないと紹介されています。多くの実験から得られた「損失回避倍率」は、おおむね1.5〜2.5だとされています。

損は、得のおよそ2倍重い。そういう反応をする生き物だということです。

なぜ「あと少しで戻る」と思ってしまうのか

ここからがトレードの話です。

田渕直也氏の『ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて』では、投資における参照点について、当初の、あるいは何らかの時点でのポジションの価値が基準点になり、そこからの乖離を損益として認識していると説明されています。

つまり、自分がエントリーした価格が基準点になるということです。

そして基準点より下にいるとき、何が起きるか。

『ファスト&スロー』には、こういう例が出てきます。900ドル失う苦痛は、1000ドル失う苦痛の90パーセントよりも大きい。だから人は、確実に900ドル失うことよりも、「高い確率で1000ドル失うが、低い確率で1ドルも失わずに済む」という賭けのほうを選ぶのだと。

損切りができない状態を、これほど正確に説明した文はありません。

確実な損失を確定させるより、まだ助かるかもしれない不確実なほうへ賭ける。それが塩漬けであり、ナンピンです。

この先に何が待っているか

田渕氏は、この人間像を「損失回避人間」と呼び、その投資行動をこうまとめています。

利益が出ればすぐに利食いしたがり、損失が出れば塩漬けにするかナンピンしたがる。その結果、少しずつしか勝てず、負けるときは大きく負ける。

ここまでは、多くの人が知っていることだと思います。

私が本当に怖いと思ったのは、その続きでした。

大きな損失を出すと心理的なダメージが残り、リスクを恐れる気持ちがさらに強くなる。そして再び挑戦する意欲がそがれていく。最後には相場から身を引いてしまう。同書はこれを「永遠に負け組投資家として終わる」と表現しています。

負けて終わるのではありません。負けたまま、そこから動けなくなって終わるのです。

私が過去の負けと恐怖について書いたのは、ここが理由です。

なお、田渕氏は同じ本の中で、プロスペクト理論はあくまで現実を説明するための仮説であり、当てはまらない事象も出てくる、厳密さにこだわるより現実を理解するためのツールとして柔軟に使うほうが有効だと断っています。私も同じ立場です。ここに書いたことは、自分の行動を見直すための枠組みであって、法則ではありません。

リベンジトレードとは何か

2枚のモニターのうち、くすんだチャートではなく真っ赤に染まった損失の画面へ、トレーダーが向き直っている様子

私は設計思想のページの用語集で、リベンジトレードを「損失のあとに、取り返そうとして行う取引。判断の基準点を『相場』としていた状態から『自分の損失を元に戻すこと』へ移してしまった取引」と書きました。

この形は、プロスペクト理論にぴったり一致します。同じ額でも、利益で得る喜びより損失で受ける痛みのほうが大きく感じられ、損を抱えた状態では危険なほうを選びやすくなる。判断の基準点が「いま相場がどうなっているか」から「減った分をゼロに戻せるかどうか」へ置き換わる、ということです。

感情が起点になるのは、基準点が移るからです。意志が弱いから起きるのではありません。基準点がずれたまま判断しているから起きます。

だからこそ、頭に血がのぼっているときに「落ち着け」と自分に言い聞かせても効きません。落ち着けと言っている当人の基準点が、すでにずれているからです。

私が「自己改革が9割」と言うときの意味

ここで、この記事のいちばん大事なところを書きます。

用語集では、自己改革を「感情を自分の上位に置かない状態を、少しずつ作っていくこと」と書きました。この記事では、もう少し実務的に言いかえます。

私の言う自己改革とは、相場に対する判断を変えることではありません。判断を下す前の、自分の状態のほうを変えることです。

同じ出来事に遭遇したとき、怒り狂う人もいれば、笑って流す人もいます。その差はその人の内部、つまり考え方だけです。外部要因は同じなのですから。

トレードでも同じです。同じチャートを見ても、寝不足の自分と、整った自分では違う判断をします。同じ含み損を見ても、生活が乱れている自分と、そうでない自分では耐え方が違います。判断の質は、判断する瞬間ではなく、そこに至るまでの生活で決まっています。

だから、手法を増やしても変わらないのです。変えるべきなのは手法を使う側でした。

そして、変えられる余地はあると私は考えています。

『ファスト&スロー』には、興味深い報告が紹介されています。被験者に「トレーダーになったつもりで答えてください」と指示するだけで、損失許容度が上がり、損失に対する感情的な反応が大きく減ったというものです。金融市場のプロは損失許容度が高いことにも触れられています。

立場や役割が変われば、同じ人間でも反応が変わる。私はこれを、自分を作り変えることには意味があるという示唆として受け取りました。

もちろん、指示ひとつで人が変わるという話ではありません。ただ、生まれ持った性格だから無理だ、という話でもないということです。

私がやってきたこと① まず「やりきる」訓練をした

最初にやったのは、トレードとまったく関係のないことでした。

自分で決めたことを、決めたとおりに最後までやる。この一点だけを訓練しました。ルールを守れない人間が、相場でだけルールを守れるはずがないと考えたからです。

いずれも私個人の記録で、万人に当てはまるものではありません。

私がやってきたこと② 脳と体の条件を整えた

次に手をつけたのは、判断する前の状態のほうです。

何時に相場に向かうのか。その日はすでにどれだけ消耗しているのか。何を食べているのか。私の場合、ここを変えたときにいちばん手応えがありました。

私がやってきたこと③ 考え方を入れ替えた

そのうえで、考え方そのものを一つずつ点検していきました。

なぜ損切りができないのか。なぜ同じ負け方を繰り返すのか。なぜ勝った話を人にしたくなるのか。なぜお金を追うほど遠ざかるのか。ひとつずつ、自分の実例で書いています。

それでも、意志には限界があります

屋上の縁で前のめりに倒れ込んだ人を、意志ではなくガードレールが物理的に受け止めている様子

ここまで書いておいて、正反対のことを言います。

私は、意志だけで最後まで持ちこたえられるとは考えていません。

自己改革を進めれば、判断の質は上がります。崩れる回数も減ります。それでも、ゼロにはなりませんでした。人は間違えるものだからです。

私は前職で建築の設計と建築確認審査をしていました。設計の世界には、人は間違えるという前提に立って、間違えても事故にならないように物のほうを設計するという考え方があります。私はその考え方を、そのままトレードに持ち込みました。

私は、感情的になった自分を意志で止められるようにすることはほぼ不可能であると考えており、可能な場合でも、その道は非常に険しく相当の日時を要すると判断しています。だから「設定で止める」仕組みのほうを作りました。MT4・MT5向けのツールです。

どういう仕組みなのかを読む(無料でお試しいただける版があります)

よくある質問

自己改革は、何から始めればいいですか

私の場合は、トレードと関係のないことから始めました。自分で決めたことを決めたとおりにやる、それだけを一定期間続ける。相場の中で自分を変えようとすると、含み損という強い刺激が同時にかかるので、切り分けたほうがやりやすいというのが実感です。

手法は勉強しなくていいのですか

そんなことはありません。9割が自己改革だというのは、1割がゼロでいいという意味ではありません。土台のない人が自己改革だけしても、勝てるようにはならないと考えています。

どのくらいで変わりますか

私は何年もかかっています。期間について言えることはありません。ただ、変わったかどうかは勝ち負けよりも、ルールを破った回数で見るほうがわかりやすいと思っています。

損切りできないのは、性格の問題ですか

私は性格の問題だとは考えていません。損失を利得より強く感じるのは、程度の差こそあれ誰もが持っている傾向だと説明されています。性格ではなく、前提として扱うべきものだと思っています。

このページで触れた本

本文で名前を出したのは、この2点です。どちらも私の本棚にあるもので、内容の正確さや有効性を私が保証するものではありません。

ファスト&スロー(上・下)

ダニエル・カーネマン著、村井章子訳。プロスペクト理論を提唱した本人が書いた本です。この記事で引いた損失回避倍率の話も、トレーダーになったつもりで答えてもらった実験の話も、下巻に出てきます。

トレードの本ではありません。人がどう判断を誤るかを、ひたすら実験で確かめていく本です。

図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて

田渕直也著。同じプロスペクト理論を、投資家の行動に翻訳している本です。利食いを急ぎ、損を塩漬けにする。その先に何が待っているかまで書かれています。

この記事で「永遠に負け組投資家として終わる」と紹介したのは、この本の言葉です。

最後に

メンタル、考え方、自分を制御する自己規律。そうしたものを少しずつ変えていった先に、結果としてデイトレードの成績がついてくる。私はそう考えて続けてきました。

そして実際、私自身がいい方向に変わったと感じることが増えました。トレードだけではなく、人としてもです。焦りのような感覚が減り、落ち着いた状態で日々を過ごせていると感じます。その状態だからこそ、仕事も生活もトレードも噛み合っているのだと思います。

勝ち続けるために、自分自身を作り変える。

その考え方に付けた名前が、私のブランド「Revolis」です。

私がどういう人間なのかは、こちらをご覧ください。

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